平方完成や立方完成を利用した因数分解を解説します.
● 平方完成で因数分解 ●
\(x^4 – 4\)
は
\((\color{teal}{x^2})^2 – \color{magenta}{2}^2\)
と考えて
\((\color{teal}{x^2} + \color{magenta}{2})(\color{teal}{x^2} – \color{magenta}{2})\)
と因数分解できるね.
そう,
\(\large\color{blue}{A^2 – B^2 = (A+B)(A-B)}\)
で \(\color{blue}{A}=\color{teal}{x^2}\), \(\color{blue}{B}=\color{magenta}{2}\) としている.
では, \(x^4 \color{red}{+} 4\) だったらどうだろう?
公式に当てはまっとらんやないかい! と思うでしょ?
もちろんこのままではダメだが, うまく変形すれば \(\large\color{blue}{A^2 – B^2}\) の形にもっていけるぞ.
まず, \(x^4\) と \(+4\) の間に \(\color{red}{+4x^2}\) を補う.
このままでは式そのものが変わってしまうので, \(\color{red}{-4x^2}\) で調節する.
\(x^4 \color{red}{+ 4x^2} + 4 \ \ \ \color{red}{- 4x^2}\)
足して引けば もとどおり. 温めて冷やせば もとどおり.
(食べて吐いた場合は もとどおりにならないけどね.)
\(x^4 + 4x^2 +4\) は \((x^2 + 2)^2\) と部分的に因数分解され,
後ろの \(-4x^2\) は \(-(2x)^2\) と同じなので,
\(x^4 + 4x^2 + 4 \ \ \ – 4x^2\)
\(=(x^2 + 2)^2 – (2x)^2\)
となるね.
\(\large\color{blue}{A^2 – B^2 = (A+B)(A-B)}\)
で \(\color{blue}{A}=\color{teal}{x^2 + 2}\), \(\color{blue}{B}=\color{magenta}{2x}\) とすると,
\((\color{teal}{x^2 + 2})^2 – (\color{magenta}{2x})^2\)
\(=\{(\color{teal}{x^2 + 2}) + \color{magenta}{2x}\}\{(\color{teal}{x^2 + 2}) – \color{magenta}{2x}\}\)
\(=(x^2 + 2x + 2)(x^2 – 2x + 2)\)
で完成だ.
先ほどの変形 \(x^4 + 4\) に \(+4x^2\) を補って \((x^2 + 2)^2\) を作ったように,
ある式に適当な項を補って \((\ \ \ )^2\) の形を作る式変形を \(\large\bf\color{blue}{平方完成}\) というぞ.
ちなみに, \(x^4\) と \(+ 4\) の間に \(\color{red}{-}4x^2\) を補っても平方完成できるけど \(\cdots\)
\(=x^4 \color{red}{-} 4x^2 + 4 \ \ \ \color{red}{+} 4x^2\)
\(=(x^2 – 2)^2 \color{red}{+} (2x)^2\)
となり, \(A^2 – B^2\) の形にならないから因数分解としては失敗だ.
必ず \((\ \ \ )^2 – (\ \ \ )^2\) の形ができるように項を補おう.
なお, \((\ \ \ )^3\) の形を意図的に作って (言うなれば 「\(\large\bf\color{blue}{立方完成}\)」),
\(A^3 + B^3\) または \(A^3 – B^3\) の因数分解に持ち込む方法もあるんだけど,
非常にレアなので最後におまけとして話そう.
● 因数分解の手順を確認しよう ●
因数分解は
① \(\large\bf\color{blue}{共通因数}\) があればくくり出し,
② 当てはまる \(\large\bf\color{blue}{乗法公式}\) があれば適用する.
③ それでもダメなら次の \(3\) つ.
\(\large\bf\color{blue}{置換}\) \(\cdots\) 式の一部を \(1\) 文字に置き換える.
\(\large\bf\color{blue}{整理}\) \(\cdots\) \(1\) 文字についての式とみて他の文字を係数扱いし, 同類項をまとめる.
\(\large\bf\color{blue}{完成}\) \(\cdots\) 平方完成して \((\ \ \ )^2 – (\ \ \ )^2\) の形をつくる. または, 立方完成して \((\ \ \ )^3 \pm (\ \ \ )^3\) の形をつくる.
いずれかを実行したら ① へ戻る.
今回は 「\(\large\bf\color{blue}{完成}\)」 をマスターしよう.
「\(\large\bf\color{blue}{置換}\)」, 「\(\large\bf\color{blue}{整理}\)」 は別ページで解説するよ.
Point <因数分解の手順> ★★★
① \(\large\bf\color{blue}{共通因数}\) (なければつくれ.)
➁ \(\large\bf\color{blue}{公式}\)・\(\large\bf\color{blue}{定理}\)(※)
③ \(\large\bf\color{blue}{置換}\)・\(\large\bf\color{blue}{整理}\)・\(\large\bf\color{blue}{完成}\)
(→ ① へ戻る)
原則, 有理数範囲で限界まで.
※ 別ページで解説する 「因数定理」 を指します.
■ 例題 ■ <因数分解 (2次式 / 4次式)>
次の式を因数分解せよ.
\((1)\) \(x^2 – y^2 – z^2 + 2yz\)
\((2)\) \(x^4 + 4\)
\((3)\) \(x^4 – 3 x^2 y^2 + y^4\)
\((1)\) 立教大 (経・法)
\((2)\) 中京大 (経)
\((3)\) 名古屋経済大
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■ 解答 ■
\((1)\)
\(x^2 – y^2 – z^2 + 2yz\)
\(=x^2 – (y^2 – 2yz + z^2)\)
\(=\color{teal}{x}^2 – (\color{magenta}{y-z})^2\)
\(=\{\color{teal}{x} + (\color{magenta}{y-z})\}\{\color{teal}{x} – (\color{magenta}{y-z})\}\)
\(=(x+y-z)(x-y+z)\) \(\cdots\) (答)
\((2)\)
\(x^4 + 4\)
\(=x^4 \color{red}{+ 4x^2} + 4 \ \ \ \color{red}{- 4x^2}\)
\(=(\color{teal}{x^2 + 2})^2 – (\color{magenta}{2x})^2\)
\(=\{(\color{teal}{x^2 + 2}) + \color{magenta}{2x}\}\{(\color{teal}{x^2 + 2}) – \color{magenta}{2x}\}\)
\(=(x^2 + 2x +2)(x^2 – 2x + 2)\) \(\cdots\) (答)
\((3)\)
\(x^4 \color{red}{- 3 x^2 y^2} + y^4\)
\(=x^4 \color{red}{- 2 x^2 y^2} + y^4 \ \ \ \color{red}{- x^2 y^2}\)
\(=(\color{teal}{x^2 – y^2})^2 – (\color{magenta}{xy})^2\)
\(=\{(\color{teal}{x^2 – y^2}) + \color{magenta}{xy}\}\{(\color{teal}{x^2 – y^2}) – \color{magenta}{xy}\}\)
\(=(x^2 + xy – y^2)(x^2 – xy – y^2)\) \(\cdots\) (答)
■ 練習 ■ <因数分解 (2次式 / 4次式)>
次の式を因数分解せよ.
\((1)\) \(9x^2 – 12xy + 4y^2 – 16\)
\((2)\) \(x^4 + x^2 + 1\)
\((3)\) \(x^4 – 6 x^2 y^2 + y^4\)
\((1)\) 北海道医療大 (歯・薬)
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■ 解答 ■
\((1)\)
\(9x^2 – 12xy + 4y^2 \ \ \ – 16\)
\(=(\color{teal}{3x – 2y})^2 – \color{magenta}{4}^2\)
\(=\{(\color{teal}{3x – 2y}) + \color{magenta}{4}\}\{(\color{teal}{3x – 2y}) – \color{magenta}{4}\}\)
\(=(3x – 2y + 4)(3x – 2y – 4)\) \(\cdots\) (答)
\((2)\)
\(x^4 \color{red}{+ x^2} + 1\)
\(=x^4 \color{red}{+ 2x^2} + 1 \ \ \ \color{red}{- x^2}\)
\(=(\color{teal}{x^2 + 1})^2 – \color{magenta}{x}^2\)
\(=\{(\color{teal}{x^2 + 1}) + \color{magenta}{x}\}\{(\color{teal}{x^2 + 1}) – \color{magenta}{x}\}\)
\(=(x^2 + x + 1)(x^2 – x + 1)\) \(\cdots\) (答)
\((3)\)
\(x^4 \color{red}{- 6 x^2 y^2} + y^4\)
\(=x^4 \color{red}{- 2 x^2 y^2} + y^4 \ \ \ \color{red}{- 4x^2 y^2}\)
\(=(\color{teal}{x^2 – y^2})^2 – (\color{magenta}{2xy})^2\)
\(=\{(\color{teal}{x^2 – y^2}) + \color{magenta}{2xy}\}\{(\color{teal}{x^2 – y^2}) – \color{magenta}{2xy}\}\)
\(=(x^2 + 2xy – y^2)(x^2 – 2xy – y^2)\) \(\cdots\) (答)
● 【発展】 立方完成の例 ●
次のような例は ウナギの産卵シーン くらい珍しい.
よって読み飛ばしても大丈夫.
以下では, 因数分解公式
\(\large\color{blue}{A^3 + B^3}\) \(\large\color{blue}{=(A+B)(A^2 – AB + B^2)}\) \(\cdots\) ①
\(\large\color{blue}{A^3 – B^3}\) \(\large\color{blue}{=(A-B)(A^2 + AB + B^2)}\) \(\cdots\) ②
を用いるぞ.
例 \(1\)
\(x^3 – 3x^2 + 3x \color{red}{- 2}\)
\(=x^3 – 3x^2 + 3x \color{red}{- 1 \ \ \ – 1}\)
\(=(\color{teal}{x-1})^3 – \color{magenta}{1}^3\)
\(=\{(\color{teal}{x-1}) – \color{magenta}{1}\}\) \(\{(\color{teal}{x-1})^2 + (\color{teal}{x-1}) \cdot \color{magenta}{1} + \color{magenta}{1}^2\}\)
(② で \(\color{blue}{A}=\color{teal}{x-1}\), \(\color{blue}{B}=\color{magenta}{1}\) とした.)
\(=(x-2)(x^2 – x + 1)\)
展開公式
\(\large\color{blue}{(a+b)^3}\) \(\large\color{blue}{= a^3 + 3a^2 b + 3ab^2 + b^3}\) \(\cdots\) ③
を覚えているかな? 次で使うぞ.
例 \(2\)
\(a^3 + b^3 + c^3 – 3abc\)
\(=a^3 \color{red}{+ 3a^2 b + 3ab^2} + b^3 + c^3\) \(\color{red}{- 3a^2 b – 3ab^2} – 3abc\)
\(=(\color{teal}{a+b})^3 + \color{magenta}{c}^3 – 3ab(a+b+c)\)
(③ の右辺から左辺への変形をした.
後ろの \(3\) 項は共通因数 \(-3ab\) をくくり出した.)
\(=\{(\color{teal}{a+b})+\color{magenta}{c}\}\) \(\{(\color{teal}{a+b})^2 – (\color{teal}{a+b})\color{magenta}{c} + \color{magenta}{c}^2\} – 3ab(a+b+c)\)
(① で \(\color{blue}{A}=\color{teal}{a+b}\), \(\color{blue}{B}=\color{magenta}{c}\) とした.)
\(=(a+b+c)\) \(\{(a+b)^2 – (a+b)c + c^2 – 3ab\}\)
(\(\large\bf\color{blue}{共通因数}\) \(a+b+c\) をくくり出した.)
\(=(a+b+c)(a^2 + b^2 + c^2 – ab – bc – ca)\)
(参考: 「因数分解 (3)」)