置換を利用した因数分解のしかたを解説します.
● 因数分解は限界まで ●
因数分解は まず,
① 共通因数 があればくくり出し,
② 当てはまる 乗法公式 があれば適用する
んだったね.
例
\(4x^2 -36y^2\)
\(=4(x^2 -9y^2)\)
(共通因数 \(4\) をくくり出した.)
\(=4\{x^2 -(3y)^2\}\)
\(=4(x+3y)(x-3y)\)
(\(\color{red}{a^2 -b^2=(a+b)(a-b)}\) で \(\color{red}{a}=x\), \(\color{red}{b}=3y\) とした.)
ところで,
\(4x^2 -36y^2\)
\(=(2x)^2 – (6y)^2\)
\(=(2x+6y)(2x-6y)\)
として終わってはダメだよ.
まだくくり出せる共通因数が \((\ \ \ )\) 内に残っているからね.
因数分解は原則, これ以上できなくなるまでやらなきゃダメだ.
因数分解は「限界」まで!
そのためにも, 最初に 共通因数がないかのチェックを忘れずにしよう.
● 原則, 有理数の範囲で ●
\(4x^2 -36y^2\) を 「限界まで」 因数分解すると \(4(x+3y)(x-3y)\)
とは言ったものの,
これはまだまだ因数分解できるんじゃないかと思ったこと, ない?
例えば \(x-3y\) の \(x\) は \((\sqrt{x})^2\), \(3y\) は \((\sqrt{3y})^2\) だと考えて,
\(x-3y\)
\(=(\sqrt{x})^2 – (\sqrt{3y})^2\)
\(=(\sqrt{x} + \sqrt{3y})(\sqrt{x} – \sqrt{3y})\)
とかね.
そうです, 変態です.
これは実は やり過ぎ.
「因数分解せよ」 と言われたら,
とくに断りがなければ, 有理数の範囲で (\(\color{red}{\sqrt{\ \ \ }}\) を使わずに) おこなう
ことになっているんだ.
だから \(4(x+3y)(x-3y)\) はこれ以上変形しなくてよし.
● 困ったときの 置換・整理・完成 ●
① 共通因数 があればくくり出し,
② 当てはまる 乗法公式 があれば適用する
ことをしても因数分解できない場合はどうするか.
対処法が \(3\) つあるぞ.
\(\large\bf\color{red}{置換}\) \(\cdots\) 式の一部を \(1\) 文字に置き換える.
\(\large\bf\color{red}{整理}\) \(\cdots\) \(1\) 文字についての式とみて他の文字を係数扱いし, 同類項をまとめる.
\(\large\bf\color{red}{完成}\) \(\cdots\) 平方完成して \((\ \ \ )^2 – (\ \ \ )^2\) の形をつくる. または, 立方完成して \((\ \ \ )^3 \pm (\ \ \ )^3\) の形をつくる.
これらのいずれかを実行すると,
今まで見えなかった 共通因数 が出てきたり,
乗法公式 が使える形になったりするぞ.
Point <因数分解の手順> ★★★
① \(\large\bf\color{red}{共通因数}\) (なければつくれ)
➁ \(\large\bf\color{red}{公式}\)・\(\large\bf\color{red}{定理}\)(※)
③ \(\large\bf\color{red}{置換}\)・\(\large\bf\color{red}{整理}\)・\(\large\bf\color{red}{完成}\)
(→ ① へ戻る)
原則, 有理数範囲で限界まで.
※ 別ページで解説する 「因数定理」 を指します.
● 2乗は平方, 3乗は立方, 4乗は? ●
ここでは 「置換」 を用いた因数分解をやってみよう.
「整理」・「完成」 については別ページで解説するぞ.
突然だがクイズ.
\(2\) 乗は 「平方」, \(3\) 乗は 「立方」.
では, \(4\) 乗は何という?
昔から \(2\) 乗, つまり平方といえば 「平方メートル \(\rm{m^2}\)」 などから連想されるように 「面積」 のイメージ.
\(3\) 乗, すなわち立方は 「立方メートル \(\rm{m^3}\)」 などの単位がつく 「体積」.
しかし \(4\) 乗は対応する図形的概念が見当たらないよね.
そんなわけで, 昔は \(4\) 乗は 「二重平方」 と呼ばれていたらしい.
信じるか信じないかは あなた次第です.
\(4\) 乗は 「\(\color{red}{2}\) 乗の \(\color{red}{2}\) 乗」 という考え方だ.
式で表現すると
\(\color{red}{x^4 = (x^2)^2}\)
苦し紛れのようだが, このような式の見方が役立つときがあるぞ.
例えば \(x^4 – 6x^2 + 8\) の因数分解.
共通因数はないし, \(4\) 乗を含む因数分解公式は知らない.
でも, \(4\) 乗は 「二重平方」 と考えて,
\(\color{red}{(x^2)^2} – 6x^2 + 8\)
\(x^2 = X\) と 置き換える と,
\(X^2 – 6X + 8\)
気づけば 乗法公式 で
\((X-2)(X-4)\)
と因数分解できる形になっているね.
\(X\) を もとの \(x^2\) に戻して,
\((x^2 – 2)(x^2 – 4)\)
有理数範囲で限界まで 因数分解すると,
\((x^2 + 2)(x+2)(x-2)\)
(\(\underline{(x + \sqrt{2})(x – \sqrt{2})}(x+2)(x-2)\) は やり過ぎ.)
● ゴツめの置換もやってみよう ●
例えば
\((x^2 + 5x + 4)(x^2 + 5x + 6)-24\)
という式も置換によって上手に因数分解できるんだけど,
どう置き換えたらいいかな?
\(x^2 = X\) とすると \(5x\) の \(x\) が \(\pm\sqrt{X}\) になってしまって, 逆にやりづらい.
そこで, \(2\) 箇所に出てくる \(x^2 + 5x\) を \(1\) 文字に置き換えてみよう.
\(x^2 + 5x = X\) とおくと,
\((X+4)(X+6)-24\)
展開, 整理すると,
\(X^2 + 10X\)
これなら因数分解できるね!
あとは \(X\) を \(x^2 + 5x\) に戻して限界まで因数分解するだけだ.
では こんなのはどう?
\((x+1)(x+2)(x+3)(x+4)-24\)
これも一度展開してから因数分解するパターンだ.
\((x+1)(x+2)\) と \((x+3)(x+4)\) をそれぞれ展開して
\((x^2 + 3x + 2)(x^2 + 7x + 12)-24\)
とすると, このあと展開するのも大変そうだし, さっきみたいなうまい置換もできないよね.
しかし, 展開の 順序変更 をして
\(\color{blue}{(x+1)(x+4)} \cdot \color{magenta}{(x+2)(x+3)} – 24\)
\(=\color{blue}{(x^2 + 5x + 4)} \color{magenta}{(x^2 + 5x + 6)}-24\)
とすれば \(x^2 + 5x\) が \(2\) 箇所に現れて, これを \(X\) とおけば展開しやすい.
これは前出の式と同じなので, もう因数分解できるね.
\((\ \ \ \ \ )\) がいっぱい出てきたら,
うまく順序変更して置換しやすい形にもっていこう.
■ 例題 ■ <因数分解 (4次式)>
次の式を因数分解せよ.
\((1)\) \(x^4 – 6x^2 + 8\)
\((2)\) \((x+1)(x+2)(x+3)(x+4)-24\)
\((2)\) 京都産業大
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■ 解答 ■
\((1)\)
\(x^4 – 6x^2 + 8\)
\(=(x^2)^2 – 6x^2 + 8\)
\(=X^2 – 6X +8\)
(\(x^2 = X\) とおいた.)
\(=(X-2)(X-4)\)
\(=(x^2 – 2)(x^2 – 4)\)
\(=(x^2 – 2)(x+2)(x-2)\) \(\cdots\) (答)
\((2)\)
\(\color{blue}{(x+1)} \color{magenta}{(x+2)(x+3)} \color{blue}{(x+4)} – 24\)
\(=\color{blue}{(x+1)(x+4)} \cdot \color{magenta}{(x+2)(x+3)} – 24\)
\(=\color{blue}{(x^2 + 5x + 4)} \color{magenta}{(x^2 + 5x +6)} – 24\)
\(=\color{blue}{(X+4)} \color{magenta}{(X+6)} – 24\)
(\(x^2 + 5x = X\) とおいた.)
\(=X^2 + 10X + 24 – 24\)
\(=X^2 + 10X\)
\(=X(X+10)\)
\(=(x^2 + 5x)(x^2 + 5x + 10)\)
\(=x(x+5)(x^2 + 5x + 10)\) \(\cdots\) (答)
■ 練習 ■ <因数分解 (4次式)>
次の式を因数分解せよ.
\((1)\) \(x^4 – 10x^2 + 9\)
\((2)\) \((x-4)(x-2)(x+1)(x+3)+24\)
\((1)\) 八戸学院短大
\((2)\) 東洋大 (工)
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■ 解答 ■
\((1)\)
\(x^4 – 10x^2 + 9\)
\(=(x^2)^2 – 10x^2 +9\)
\(=X^2 – 10X + 9\)
(\(x^2 = X\) とおいた.)
\(=(X-1)(X-9)\)
\(=(x^2 – 1)(x^2 – 9)\)
\(=(x+1)(x-1)(x+3)(x-3)\) \(\cdots\) (答)
\((2)\)
\(\color{blue}{(x-4)} \color{magenta}{(x-2)(x+1)} \color{blue}{(x+3)} + 24\)
\(=\color{blue}{(x-4)(x+3)} \cdot \color{magenta}{(x-2)(x+1)} + 24\)
\(=\color{blue}{(x^2 – x – 12)} \color{magenta}{(x^2 – x – 2)} + 24\)
\(=\color{blue}{(X-12)} \color{magenta}{(X-2)} + 24\)
(\(x^2 – x = X\) とおいた.)
\(=X^2 – 14X + 24 + 24\)
\(=X^2 – 14X + 48\)
\(=(X-6)(X-8)\)
\(=(x^2 – x – 6)(x^2 – x – 8)\)
\(=(x+2)(x-3)(x^2 – x – 8)\) \(\cdots\) (答)